女性が抱える「月経の課題」に向き合う、MeWプロジェクトとは!?


生理の貧困」という言葉を耳にしたことはありますか?


日本においては、女性にとって欠かせない生理用品を、経済的な理由・羞恥心・周囲の無理解などにより購入・入手することが難しい状態を指しています。


2022年3月、厚生労働省が「『生理の貧困』が女性の心身の健康等に及ぼす影響に関する調査」を公表し、メディアで取り上げられる機会も多くなってきましたが、欧米諸国に比べて、認知や課題解決の取り組みは大きく遅れをとっています。

(出典:厚生労働省ホームページ https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_24693.html


そんな中、大阪大学ユネスコチェアメンバー大阪大学人間科学研究科の学生たちが、月経をめぐるウェルビーイングを推し進めたい!と立ち上げたのが「MeW(ミュー)プロジェクト」です。


今回は、プロジェクトの中心メンバーである杉田映理(すぎた・えり)さんと、小塩若菜(こしお・わかな)さん・熊野海音(くまの・あまね)さんに、その熱い想いを伺いました!


左から杉田映理さん・小塩若菜さん・熊野海音さん



1. Mewプロジェクトでは、どういった活動をされているのですか?


杉田さん:生理用品の無償提供用ディスペンサーを開発・設置し、トイレ内で生理用品を取れる仕組みづくりのために実証実験の調査をしました。

また、月経に関する勉強会イベントを開催、SNSなどを通じて発信もしています。




2. MeWプロジェクトを立ち上げようと思ったきっかけは?


杉田さん:私が10年ほど前から、アフリカの月経に関する研究をしていて、今年の6月に『月経の人類学―女子生徒の「生理」と開発支援』という本を出版したのですが、その本をまとめるにあたって日本を含む世界8地域の国際比較研究を進めていくうちに、日本にもまだまだ問題があることに気づいたんです。


アフリカの伝統的社会では、月経がタブー視されていますが、日本も同じだ!と。

生理用品を買うときに中身が見えない袋に入れられたり、「アレの日」などと言葉を濁されたり・・・生理は隠されるべきものとして認識されていますよね。


トイレットペーパーは必需品として当たり前にトイレに設置されているのに、生理用品は無い

欧米ではトイレ内での生理用品の無償提供がすでに広がっているので、まずはディスペンサーを作ろう!と考えました。


不意な出血・想定外の経血量がある時などは本当に困りますし、下着や服を汚してしまった時の恥ずかしさ・ショックはとても大きいものです。


月経のある人が抱える課題に向き合うためには、人目を気にせず、必要なタイミングで受け取れるように、トイレ内で、無償で 受け取れるものを作りたかったんです。




3.その想いを形にするためにどういった準備をしましたか?


杉田さん:昨年3月に構想を立て、私と、秘書と、4月に入学した学生の小塩さんとで活動を始めました。

まず資金をどうするかですが、4つの研究資金源が考えられました。

私が所属する大阪大学から支給される研究費科研費助成金や他団体からの寄付、そして学部内の競争資金というものがあり、その学部内の競争資金の締切が直近だったので応募してみることにしたんです。


私は大阪大学ユネスコチェアという、ユネスコからお墨付きをもらった一つの研究組織にも所属しているので、その先生たちにも声をかけて参画してもらいました。

一研究者の申込みよりも、ユネスコチェアの後ろ盾によって信用が上がり、5月の末には無事に研究費をいただくことができました!


そこから、ディスペンサーの開発に試行錯誤しました。

災害時の避難所やイベント会場での使用も視野に、軽量で運びやすく、折りたたんで保管ができ、廃棄もしやすく強度のあるものにしたくて、ダンボール会社をあたることにしました。

それもできれば大手の会社ではなく、小さいところと力を合わせて形にしたかったので、ひたすらネットや電話でリサーチをしましたね。

そしてタマパック株式会社様とのご縁があり、オリジナルのディスペンサーを製作していただけることになりました。


フラットな状態


組み立て後



ディスペンサーにはナプキン2種類とタンポン1種類を入れることができます。

はじめは大阪大学の人間科学部・人間科学研究科棟内の女子トイレと多目的トイレのみに設置していましたが、大学内全体への設置へと広がり、現在では大阪府内の中学・高校の他、 いくつかの場所でディスペンサーを設置していただいています。


大阪大学内のものには大手3社の使い捨てナプキンから1種類環境に配慮したノンポリマーの使い捨てナプキンを1種類、そしてタンポンを1種類入れています。他の設置場所では生理用品をそれぞれの基準で入手しています。

防災備蓄費だったものを自治体から支給されたところや、寄付でいただいた生理用品を入れている場所もあります。

社会全体で、これらの費用が予算として下りるようになるといいなと思っています。




4.プロジェクトの立ち上げ・運営において、大変だったことや現状の課題などを聞かせてください。


杉田さん:現場の方が設置を快諾してくださった後に、上の方で設置の承認が下りなかったというケースがあり、悔しい思いをしたこともありますね。


小塩さん:月経に関して、多くの課題があることを知って、なんとかしたいというピュアな気持ちで活動を始めました。

しかしそのうち、単に純粋に思いを伝えるだけでなく、戦略的なアプローチをしていかなければうまくいかないことがあると気づきました

マジョリティ側にどういったメリットが得られるのかを具体的に提示しなければ、マイノリティ側の問題は変わらないのだと実感することもありました。

だからこそ、現状の課題や解決に向けた取り組みをより多くの人に知ってもらって、少しずつ社会が変わっていくといいなと思っています。


熊野さん:私は勉強会の開催やイベントの出展に携わっているのですが、イベントの際に『月経を楽しもう!』という見出しを用いたところ、イベントのスポンサー団体の方に見出しの変更をして欲しいと打診されたことがありました。


「月経を楽しむ」というメッセージはやはりインパクトが強すぎて、炎上しかねないというご意見でしたが、そのタブーこそがわたしたちの解決したい課題の一つです。


月経について知ること、話すことが、恥ずかしいことでもタブーでもなく当たり前になる社会を目指して開催するイベントですので、説明してご理解いただきました。


また、イベントの際に「月経」というワードにつられて、冷やかし目的のような男性が来られて対応に困る場面もありました。


適切な月経教育のためにお子様連れでイベントに参加される方や、中学・高校生の参加が増えるのは嬉しいことで、このときも中高校生ボランティアの方々が参加していたので、注意が必要な来場者がいた場合の対応についても、事前にしっかり対策をしておくべきだったと反省しています。



5.MeWプロジェクトのベースとなっているコンセプト:Social Design for Health(健康のための社会デザイン)とはどのようなものでしょうか。


杉田さん:Social Design for Health(健康のための社会デザイン)とは、大阪大学ユネスコチェアのメイン・コンセプトなのです。


「健康」でいるためには医療的側面だけでなく社会的側面も大きい人種や貧富の差によっても健康の度合いが違いますよね。

社会的要素を変えていかないと、健康促進にはつながらないのです。


だからこそ、「社会をデザインして、変えていこう。社会が健康を作るんだ!」という意味があります。


たとえば、制度を改革することで月経問題は変わっていけると考えています。


小さな社会デザインとして、すべてのトイレに生理用品のディスペンサーが設置され、誰もが無料で受け取れることで、ウェルビーイングが少し前進するのでは、と考えています。

こういった取り組みがループされていくと、よりよい社会づくりができていきますよね。




わたしたちが特に伝えたいことが2つあります。

1つは、生理用品のインフォームドチョイス(正しい情報を得た、または伝えられた上での生理用品の選択)の推進です。


・今の自分の経血量・体調・好みに合うものはどれなのか。

・環境問題を考えたときに一番良いものはどれなのか。

・タンポンや使い捨てナプキン以外にも、月経カップ吸水性ショーツなどもある。


など、正解はなく、その人それぞれに合うものを選択できるということが大切なのです。


もう1つは、こういった現状を男性にもっと知ってほしい、ということです。

月経にまつわる不調、起こりうるトラブル、トラブルが起きたときにどのように対処しているのか、それらがどれほど多様な症状があるものなのか・・月経によってどれくらいの時間やお金を捻出しているのかなど、タブーの陰に隠されてきたことが、実はたくさんあるんですよね。




6.今後の活動予定や展望、伝えたいメッセージなどがありましたら教えてください。


熊野さん:大学内での研究会やオフラインでのイベントをもっと開催したいですね。

コロナ禍で開催ができなかったのですが、広報の仕方ももう少し学んで行きたいです。

女性たちに自分のカラダに起きている現象を、もっと知ってほしいと考えています


小塩さん:私はソーシャル・アクティビストとして、社会を変える働きをしていきたいです。

学問の世界でわかったことを、一般の社会に持っていける媒介者になりたいですね。

今後、大学外の機関でもワークショップなどを開催していきたいです。


杉田さん:MeWプロジェクトは今、ディスペンサーの開発→学内での実証実験→イベントやセミナー等での啓発・普及活動→ディスペンサーの一般販売、と、第4のフェーズに来ています。

ディスペンサーは今のところは受注生産ですので、発注数に応じて価格が変動することも踏まえて、販売モデルをどのようにしていくか構想を練っているところです。

プロジェクト以外の、大学でしかできない研究も引き続き頑張って行きたいですね。



女性の生理を快適に。そして、生理について当たり前に話せる社会を目指して、全国のトイレに、無料の生理用品が設置される日が来るといいですよね♡


MeWディスペンサーは11月15日まで、一般の方のご購入希望を受付しているそうなので、そちらも是非ご覧くださいね。



MeWプロジェクト Instagram:https://www.instagram.com/mewproject_ou/

          Twitter:https://twitter.com/mewproject_ou?s=20